スマホとの距離の取り方

理性でやめるのは難しい

 先日、塾に自習しに来た高校生が「勉強している間、預かっておいてもらえますか」と言って携帯電話(スマホ)を持ってきました。「目の前にあると、つい触ってしまうから」と理由を説明されて納得したのですが、自分から自習しに来るような勉強熱心な生徒でも負けてしまうほどスマホの誘惑は強烈なのだということを改めて思い知らされました。
 スマホというツールは便利な反面、付き合い方がとても難しいものです。大人でもスマホを手放せない人もいるほどですから、理性が発達途上の子どもならなおさらです。スマホに生活を振り回されないよう、親子できちんと話し合って、各家庭に合ったルールを作っていく必要があります。
 まずは、「この時間はスマホを見ない」という時間帯を決めると良いでしょう。特に、朝はスマホに触らないことが大事です。朝起きてすぐにスマホを見てしまうと、そこから意識が一日中スマホに支配されてしまって、朝ごはんも、出かける支度も、学校の時間もそわそわして集中力を欠いてしまいます。このほか、夕食時にはスマホを触らない、夜9時以降はスマホの電源を消すなど、「見ていい時間」と「見てはいけない時間」をはっきりと分けましょう。
 子どもが小さいうちは、基本的には大人が管理してあげて、見てもいい時間に手渡すというスタンスが良いと思います。子どもを信用して、子ども自身に管理を任せてもいいのでは?という声もあるかもしれませんが、やはりスマホが近くにあれば「見ないように」と言っても意識がそちらにいってしまいますし、通知音や振動が集中を妨げます。自制するのはかなり難しいと思いますので、使ってはいけない時間にはそもそも視界に入らないようにしてあげることが大切です。
 さらに、時間を決めるとともに、リビングでは見てはいけない、寝室に持ち込んではいけないなど「使える場所」「使えない場所」を決めることもお勧めです。そういったことを事前に決めておくことで、「ここはスマホを使う場所ではない」と脳にインプットさせ、条件反射状態をつくるのです。

スマホに費やしている時間を振り返る

 スマホとの付き合い方を考えるうえで有効なのが、自分が何に時間を使っているかを把握することです。1日の中で、朝起きてから学校に行くまでの時間、学校に行っている時間、帰ってきてから寝るまでの時間はこれくらいと、ざっくりでいいので、表に書き出してみます。そして、「現状では、スマホにこれくらいの時間を使っている」と振り返ってみると、どれくらいの時間を何に使っていたか、どれだけスマホに時間を費やしているかを把握しやすいでしょう。また、週単位、月単位で考えてみて、「次の中間試験まで〇日だから、次の土日は大事だ。スマホばかり見ていたら勉強ができない」というように逆算をし、時間の使い方を考えてみるのもいいでしょう。
 もちろん、スマホ自体はこれからのコミュニケーションツールとして必要不可欠ですし、悪い存在ではありません。問題は、そこに意識がとらわれすぎて生活のバランスが崩れてしまうことです。スマホに時間を奪われすぎて、勉強や習い事などのクオリティが下がることは避けなければなりません。そのためには、第三者がむやみに禁止したり取り上げたりするのではなく、自分自身がスマホとどのように付き合っていくかを考えることが大切です。

「ついスマホ」のクセを断ち切る

 つい、手持ち無沙汰な時間に無意識にスマホを手に取ってしまう、宿題をやらなければいけないのにやる気が出なくてスマホに逃避してしまう、というパターンが習慣づいてしまっている人もいるかもしれません。
 そんなときには、体を動かしてみることも意外に効果があります。「ヒマだな」「スマホを触りたい」と思ったら、伸びをするとか、肩を回すとか、とりあえず体を動かしてみる。それを常に意識することで、“ついスマホ”や“なんとなくスマホ”の回路を断ち切って“体を動かす”という新しい習慣に置き換えるのです。
 また、体を動かすことで、行動力の源になるドーパミンが出るため、その勢いで宿題などに取り掛かってしまいましょう。実は、テンションはこのようなちょっとした運動で簡単に上げることができるのです。簡単に上げられるぶん、下がるのも早いのですが、「やらなければいけないことがあるのに気乗りしない」といったとき、一時的に気分を高揚させ、行動に初速をつけるのに有効です。